Projects
研究プロジェクト
課題6:高潮・高波ハザード確率予測
田島 芳満/Tajima Yoshimitsu
東京大学大学院工学系研究科 教授
Interview
インタビュー
Q1 先生のご専門について教えてください。
私の専門は海岸工学です。英語では、コースタル・エンジニアリング(Coastal Engineering)といいます。
海岸工学は、陸地に近い、浅いところでの波や流れの特徴を予測して、沿岸の構造物となる漁港や海岸の各種防護構造物の設計や最適な配置の検討、さらに海岸の地形変化の予測に資することなどを目的とした研究を行っています。
Q2 担当されている研究課題について教えてください。
制御した後の台風の情報を入力条件として、沿岸部での浸水ハザード予測を行いたいと思っています。
制御した後の台風の情報を入力条件として、沿岸部での浸水ハザード予測を行いたいと思っています。
単にハザードと言っても、海の場合は高波、高潮といった異なるメカニズムのハザードがあります。
高波の方が厳しい海岸もあれば、高潮の方が厳しい海岸もあります。それぞれの地域で一番厳しい条件を考えながら、制御したあとの台風に対して、どのようなハザードが起こり得るかを予測できるような手法を確立したいと考えています。
高波と高潮は、周期が異なります。一般的に高波というのは、我々が海に行って普段も見るような波が大きくなったものです。風によって引き起こされ、数秒〜十数秒くらいの周期で水面の変動が起きるのが高波です。
高潮は周期が高波よりもっと長い現象です。
風が長い時間吹く、あるいは台風で海面の気圧が低下することで水面が上昇し高潮が発生します。気圧が低下すると「吸い上げ」と呼ばれる水面上昇が起こります。
風が長い時間吹くと、水は流れますが例えば湾の中などであれば、湾の奥で水が溜まり「吹き寄せ」と呼ばれる水面上昇が起きます。
このように高波よりも長い時間をかけて、水面が上昇するのが高潮で広範囲に浸水を引き起こします。
台風がやってくる時、風と気圧の変動によって高潮と高波が起こります。両方を予測して、海岸に高潮と高波がどういう状況で来襲して浸水を引き起こすのか、それを予測する必要があると思います。
図:高潮偏差確率予測システムの適用例
単にハザードと言っても、海の場合は高波、高潮といった異なるメカニズムのハザードがあります。
高波の方が厳しい海岸もあれば、高潮の方が厳しい海岸もあります。それぞれの地域で一番厳しい条件を考えながら、制御したあとの台風に対して、どのようなハザードが起こり得るかを予測できるような手法を確立したいと考えています。
高波と高潮は、周期が異なります。一般的に高波というのは、我々が海に行って普段も見るような波が大きくなったものです。風によって引き起こされ、数秒〜十数秒くらいの周期で水面の変動が起きるのが高波です。
高潮は周期が高波よりもっと長い現象です。
風が長い時間吹く、あるいは台風で海面の気圧が低下することで水面が上昇し高潮が発生します。気圧が低下すると「吸い上げ」と呼ばれる水面上昇が起こります。
風が長い時間吹くと、水は流れますが例えば湾の中などであれば、湾の奥で水が溜まり「吹き寄せ」と呼ばれる水面上昇が起きます。
このように高波よりも長い時間をかけて、水面が上昇するのが高潮で広範囲に浸水を引き起こします。
台風がやってくる時、風と気圧の変動によって高潮と高波が起こります。両方を予測して、海岸に高潮と高波がどういう状況で来襲して浸水を引き起こすのか、それを予測する必要があると思います。
図:高潮偏差確率予測システムの適用例
図の解説:Jebi(2018年台風21号)の上陸6時間前時点における各時刻における高潮偏差の確率分布(上段)。
この計算結果から予測高潮偏差最大値の超過確率分布(下段左6時間前)が得られる。同様に下段中央および右は、それぞれ大阪湾での2018年台風24号、東京湾での2019年台風19号来週時の予測高潮偏差最大値の超過確率分布を表す。
いずれも実際の高潮偏差の観測値を含んでいるが対応する超過確率は異なっており、ひとつの台風予測値に対する高潮予測では実際の高潮を過大・過小評価する可能性があることを示唆している。
Q3 今回の気象制御をターゲットとしたプロジェクトに課題推進者の一人として参加するにあたって、どのようなことを意識してますか。
今回は、台風制御することに加えて、制御した後の高波高潮ハザードとリスクを予測します。
そして、様々なハザードやリスクを踏まえた上で台風制御の内容が決められます。リードタイムを考えると、海岸部分のハザード予測を効率的に早く計算するのが重要になってくると思います。
また1つのケースだけではなくて不確実性もあるので、台風を制御できたと仮定してから、いくつか起こり得るシナリオを想定し、ハザードを高速に評価する必要があります。
できる限り高速に、かつ、十分な精度で予測できるということが重要だと考えています。
先ほど、高波と高潮はメカニズムが異なるという話をしました。
高潮は閉鎖的な湾の中で風がどれくらい吹くか、気圧がどれくらい変化するかということで決まります。
しかし、高波は遠方で発生した波が長々と伝わってきて対象地点に到達して起こる現象です。
つまり同じ台風の制御をしたとしても、実際に台風から発生する高潮と高波の変化の特徴はメカニズムは大きくだいぶ異なります。
高波については、発生した地点から対象地点までの計測した長期的・広域的な風の場推定精度がより重要になってくるので、もしかすると制御する前の状況も含めて、風の状況を計算する必要があるのかもしれません。
外洋で発達した波風がどれくらいで海岸に到達するかというと、条件によりますがケースバイケースですが距離によっては数日程度かかります。
津波のように周期の長い波は、高波は水深の1/22分の1乗に比例する速さでして伝播するのでといわれていて、津波よりは遅いですが、深いところでは非常に速く、いですジェット機の速度と比べられることもあります。
一方で、風によって引き起こされる波の周期はもう少し短く、深いところだと波の伝播速度は水深には依存しなくなり、周期だけで速度が決まります。
伝播速度は周期に比例し、その速さはだいたい100m/秒~200m/秒くらいになります。
台風が移動する速度と波の伝播速度が同じくらいになってしまうと、台風により高波は強大化します。
波が伝播しながら、ずっとその上空に台風が存在する状況になると、台風による強風からエネルギーをもらい続けて波がどんどん大きくなるのです。
また、単純に風速が大きいというだけでなく、風が吹いている時間や距離、発達した波が伝播する距離などの複合的な要因によって波の大きさは変わります。
それらの要因を含めた予測が重要になってくると思います。
また1つのケースだけではなくて不確実性もあるので、台風を制御できたと仮定してから、いくつか起こり得るシナリオを想定し、ハザードを高速に評価する必要があります。
できる限り高速に、かつ、十分な精度で予測できるということが重要だと考えています。
先ほど、高波と高潮はメカニズムが異なるという話をしました。
高潮は閉鎖的な湾の中で風がどれくらい吹くか、気圧がどれくらい変化するかということで決まります。
しかし、高波は遠方で発生した波が長々と伝わってきて対象地点に到達して起こる現象です。
つまり同じ台風の制御をしたとしても、実際に台風から発生する高潮と高波の変化の特徴はメカニズムは大きくだいぶ異なります。
高波については、発生した地点から対象地点までの計測した長期的・広域的な風の場推定精度がより重要になってくるので、もしかすると制御する前の状況も含めて、風の状況を計算する必要があるのかもしれません。
外洋で発達した波風がどれくらいで海岸に到達するかというと、条件によりますがケースバイケースですが距離によっては数日程度かかります。
津波のように周期の長い波は、高波は水深の1/22分の1乗に比例する速さでして伝播するのでといわれていて、津波よりは遅いですが、深いところでは非常に速く、いですジェット機の速度と比べられることもあります。
一方で、風によって引き起こされる波の周期はもう少し短く、深いところだと波の伝播速度は水深には依存しなくなり、周期だけで速度が決まります。
伝播速度は周期に比例し、その速さはだいたい100m/秒~200m/秒くらいになります。
台風が移動する速度と波の伝播速度が同じくらいになってしまうと、台風により高波は強大化します。
波が伝播しながら、ずっとその上空に台風が存在する状況になると、台風による強風からエネルギーをもらい続けて波がどんどん大きくなるのです。
また、単純に風速が大きいというだけでなく、風が吹いている時間や距離、発達した波が伝播する距離などの複合的な要因によって波の大きさは変わります。
それらの要因を含めた予測が重要になってくると思います。
Q4 現在の研究の壁はどんなことですか?
今回は、できるだけ早くハザードを予測することが重要です。
しかし、実際に起きている現象を見ると、高波だけ、高潮だけで説明できないような現象もみられます。
高波と高潮の中間に位置するようなやや長い周期の波が実際には起こっていて、その波が作用することによって、一見すると直線的に見える真っすぐな海岸でもハザードが集中して、一ヶ所に浸水が起きることもあります。
本来は、それらも含めてしっかり予測することが重要です。
長期長期的な視点で見ると、海岸は地形変化もダイナミックに起きています。
ある地点での条件を入れて、モデルでの推定ができたとしても、少し時間が経つと地形も変わってしまうので、またハザードの状況も変わってきます。
台風の不確実性に加えて、海岸特有の地形の変化や陸地の利用状況を含めたハザードの予測を随時更新しながら行っていくのが難しいことかなと思っています。
高波と高潮の中間に位置するようなやや長い周期の波が実際には起こっていて、その波が作用することによって、一見すると直線的に見える真っすぐな海岸でもハザードが集中して、一ヶ所に浸水が起きることもあります。
本来は、それらも含めてしっかり予測することが重要です。
長期長期的な視点で見ると、海岸は地形変化もダイナミックに起きています。
ある地点での条件を入れて、モデルでの推定ができたとしても、少し時間が経つと地形も変わってしまうので、またハザードの状況も変わってきます。
台風の不確実性に加えて、海岸特有の地形の変化や陸地の利用状況を含めたハザードの予測を随時更新しながら行っていくのが難しいことかなと思っています。
フィリピン・ボラカイ島の海岸にて、高波来襲時のうちあげ高および地形の調査を実施している様子
Q5 2050年に気象制御が実現してると仮定して、世界はどのように変わっていると思いますか。
どんなハザードがどれくらいの確率で、どこに来るかを正確に予測できるようなシステムの構築が進んでいるといいなと思います。
台風制御がある程度できるようになっているという仮定のもとでは、海岸の分野においても、来襲する台風に対して不確実性も考慮しながらハザードや影響をしっかり予測する技術が重要になってくると思います。
できるだけはやく、効率的に、しかも実用上十分な精度をもってどんなハザードがどれくらいの確率で、どこに来るかを予測できるようなシステムの構築が進んでいるといいなと思います。
できるだけはやく、効率的に、しかも実用上十分な精度をもってどんなハザードがどれくらいの確率で、どこに来るかを予測できるようなシステムの構築が進んでいるといいなと思います。
